1年が過ぎるというのは本当に早いもので、春が来たと思ったらあっと言う間に桜が散って
暑くなり、かと思えばすぐに紅葉が目に入り、そして気が付くと外は一面の雪景色だったりする。
今はまさに、そんな1年の終わりを感じさせるような雪景色の中で、私達は残り少ないこの年を
過ごしている。

そんなわけで毎日布団から出るのが嫌になるくらい寒いんだけど、ここ聖應女学院の中は
そんな寒さすら吹き飛ばしてしまいそうな活気と熱気に満ち溢れている。
何故かって?ふっ、愚問ね。12月24日…つまりにクリスマスが近付いてるからに決まってるでしょっ!
この学校はキリスト教の学校だから、毎年結構派手に催し物が行われるのだ。
かくいう私も(自分で言うのもどうかとは思うけど)結構なお祭り好きなので、毎年クリスマス関係の
イベントは結構楽しんでいたりする。お祭りムードだと、いつもみたいに猫をかぶる必要もないしね。

ところが、今年はどうもそこまで乗り気になれない。
何でかと言うと、ここ最近、一つ引っ掛かっていることがあるからだ。



貴方だけのサンタクロース(side:御門まりや)



 瑞穂ちゃんに元気が無い。
それが、私がずっと引っ掛かっていることだった。

元気が無いといっても、傍目から見て明らかにそれが分かる程度のものじゃない。
瑞穂ちゃんは何かを懸案事項を抱えているとすぐに一人でぼーっと考えてしまう癖があるんだけど、
今回は立ち居振る舞いには特にそんな所は見られなくて、多分由佳里や奏や一子ちゃんは気付いて
いないんじゃないかと思う。

でも、もう10年来の付き合いになる私には、何となくだけど瑞穂ちゃんが何かを抱えてることが分かる。
まあ、何を抱えてるかまでは分からないのが問題なんだけどね。
でも、瑞穂ちゃんが何か(多分良くないもの)を抱えこんでいると分かった以上、放っておくわけには
いかなかった。
…我ながら世話好きね、本当に。






「瑞穂お姉様に何か変わったこと、ですか?いえ、私達が見た限りでは特に…ね、奏ちゃん?」
「はいなのですよ。瑞穂お姉様はいつも通りの瑞穂お姉様だと思いますのです。一子ちゃんは
どう思われますか?」
「私もお二人と同じで、特にお姉様に何かあったようには思えないですけど…」

…ふむ、やっぱりか。
自分ではいつまで考えても埒が開かないので、とりあえずは私以外の瑞穂ちゃんに近い子に
聞いてみようと思い立った。それでまずは、寮で一緒に暮らしているこの3人に聞いてみたんだけど…
やっぱり気付いてないみたいだった。

「お姉様に何かあったんですか?」
「だとしたら心配なのですよ…。」
「おおおおおお姉様に何かあったらどどどどうしましょう!?」

ふう…。私は一つ溜め息をついた。
何とかして瑞穂ちゃんの元気が無い原因を掴みたかったけれど、他の人に余計な心配をかけるわけにも
いかないので、私は3人の反応を見るとこう答えておいた。

「ううん。あんた達がいつもと変わらないって言うなら、多分私の気のせいね。ごめん、変なこと
聞いちゃって。」

もちろん、瑞穂ちゃんの異変が気のせいだなんて思っていない。
でも、気を回してクリスマスの行事に乗り気になれなくなるようなのは私だけで充分だ。

さて、他に瑞穂ちゃんに近い人と言えば…。






「瑞穂さんに何か変わったところ…ですか?いえ、私にはいつもと同じように見えましたが…。」

う〜ん、学園内では私より瑞穂ちゃんと一緒にいる時間が多い紫苑さまでも駄目か。
瑞穂ちゃんが男だって最初に見破ったのも紫苑さまだし、何か分かるかと思ったんだけど…。

「ごめんなさいね、何の役にも立たなくて…。」
「いえ、紫苑さまが謝られることじゃありませんよ。私の方こそ、変なこと聞いてすみませんでした。」

やっぱり余計な心配をさせたくなかったから、私は由佳里たちの時みたいに煙に巻いて(言い方悪いか)
その場を離れようとした。

「瑞穂さんに、何かあったんですね?」

でも、相手は瑞穂ちゃんが男だってことをあっさり見破った紫苑さまだ。そう上手くはいかなかった。
…バレてしまっては仕方が無い。私は思いきって喋ることにした。紫苑さまに疑われるのもゴメンだしね。

「…はい。でも、紫苑さまもおっしゃったとおり、表面上はいつも通りなんですよ。ただ、どこか少し元気が
無いように見えて…。」
「そうですか…。私はまりやさん程瑞穂さんとのお付き合いは長くないですけど、瑞穂さんは何かあっても
自分一人で抱えこんでしまうような方ですから、心配ですわね…。」

流石は紫苑さま、よく分かっている。この人相手に嘘はつけないなぁ。同じエルダーとして、瑞穂ちゃんに
爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい…かも。
でも、そう言われて私は尚更、瑞穂ちゃんの元気が無い原因を突き止めて、元気を取り戻してあげなきゃと再確認。

「一応、私の方からもそれとなく瑞穂さんに聞いてみますね」
「ありがとうございます、紫苑さま」

意気込みも新たに(?)私はその場を去ろうとした。
ところが、紫苑さまにはまだ言いたいことがあったみたいだった。

「でも、そんな些細な変化に気がつくなんて…。まりやさんはとても瑞穂さんのことがお好きなのですね」
「――っ!し、紫苑さまっ!?」

わわわ、な、何言ってるんですか、紫苑さまっ!
そ、そりゃ長い付き合いですし瑞穂ちゃんのことは嫌いじゃないですけど、そんなことは…!
そんな混乱状態になっている私に、紫苑さまは更なる追い討ちをかけた。

「頑張ってくださいね、まりやさん」

が、頑張ってって、何を…?あ、瑞穂ちゃんのことか。
紫苑さまの一言で完全にテンパってしまった私は、最早物事を正常に考えられずにいた。
とりあえず、紫苑さまとこれ以上話していると余計大変なことになりそうだったので、今度こそ
足早にその場を後にした。

「し、し、失礼しますっ!」

そこから離れて、さらに時間が経って私はようやく落ち着きを取り戻した。
紫苑さまの一言でこんなに動揺するなんて…。私ってば、本当に何やってんだろ。

でも、紫苑さまにも瑞穂ちゃんの異変とその原因は分からなかった…か。
他に瑞穂ちゃんに近い人って…誰かいたかな?

う…一応、いるにはいる。
でも、いくら瑞穂ちゃんのためとはいえ、あんなのの所へ私から出向くなんて…。

しばらく私は自尊心と瑞穂ちゃんを天秤にかけたが(こんなことをする時点で私は将来ろくな人間にならないと
自分で思った)、結局瑞穂ちゃんのために「あんなの」のところへ聞き込み調査に行くことにした。
瑞穂ちゃんのためだし、困った時は自尊心なんて持ってられないわよね。






「貴方が私の元を訪ねてくるなんて、珍しいこともあるものですわね。明日は霰か雹でも降るかしら?」

…どうしてアンタはそういうことしか言えないのかしらね、貴子。
まあ、私だって来たくて来たわけじゃないし、今日のところはおあいこってことにしておこう。
そもそも今は不毛な言い合いをしてる場合じゃないし。

「…お姉様に変わったこと?さあ、私は普段で授業で少しご一緒するだけですから
よく分かりませんわね。」

やっぱりアンタに聞いたところで何の解決にもならないか。
まあいいわ、それだけ聞ければ十分。
しかし、貴子もダメとなると…他に誰がいるだろうか。

「お待ちなさい、まりやさん」

柄にもなく考えこんだまま生徒会室を出ようとした私を、貴子はさっきの紫苑さまのように呼び止めた。

「何よ、まだ何かあるの?」
「まったく、貴方という人は…。自分の聞きたいことだけ聞いて、挨拶もせずにさっさと帰ろうと
するなんて。無礼極まりないですわね」

アンタにだけはそれを言われたくないわ。
そう思ったけど、私にも「多少は」非があったので、言い返さないでおいた。貴子が言いたいのは
そんなことじゃないみたいだったし。

「で?用件は何よ?アンタ他に言いたいことがあったから、私を呼び止めたんでしょ?」
「…率直に申しますわ。どうして貴方は、お姉様のためにそこまで一生懸命になれますの?」

貴子は私の聞き方にまたお説教モードに入ろうとしていたようだが、何とかそれを自制して
私にこう言ってきた。
…どうして瑞穂ちゃんのために一生懸命になれるのか…か。
それはやっぱり、

「何だかんだ言ってもやっぱり幼馴染みだし、私が助けてあげないといけないって思うところも
あるから…かな。昔助けられたこともあるし」

って、貴子相手に何を言ってるんだろ、私。
呆れてるかと思ったら、貴子は意外にも真剣な顔で私の言葉を聞いていた。
私は言うだけ言って聞くだけ聞いたのでさっさと生徒会室を出たが、その後も私の言葉を聞いた後の
貴子の表情が頭を離れなかった。






「まりやさん」

それから時は経ってクリスマス前日。依然として何の手掛かりも得られなかった私のところへ
また紫苑さまがやって来た。やっぱり瑞穂ちゃんのことを心配してるみたいで…果報者ね、あの子は。

「瑞穂さんは…相変わらずですか?」
「ええ。やっぱり何か隠してるみたいで、こっちが黙っていては何も話してくれなくて。」
「そうですか…。」

紫苑さまは浮かない顔をしていた。…まったく、人に心配かけまいとして何も言わない瑞穂ちゃんは
それで逆にみんなに心配かけてるじゃないの。これじゃあ本末転倒よ。

「まりやさん。もし瑞穂さんが何も話してくさらないのなら…。」
「?」

そんな風に瑞穂ちゃんに対して憤りを感じていると、紫苑さまは私にそっと耳打ちしてきた。
何か瑞穂ちゃんに悩みを喋らせる方法でも思いついたんだろうか。

「私達が瑞穂さんが何も話してくれないことを心配している、ということを伝えればよろしいのでは
ないでしょうか。お優しい瑞穂さんのことですから、そう言えばきっと打ち明けてくれますわ。」
「…。」

成程、そういう手があったか。やっぱり紫苑さまは凄い人だ。
いつもみんなに優しい瑞穂ちゃんのことだ。そのみんなが心配しているとあれば、きっと自分の悩みを
話してくれるだろう。

「ありがとうございました、紫苑さま。早速やってみますね。」
「お役に立てたようで何よりです。頑張ってくださいね、まりやさん」

よ〜し、今度こそ(アイデアを思いついたのが紫苑さまだっていうのに少し引け目を感じるけど)
瑞穂ちゃんの内に抱えてるモノを吐き出させてやるわよっ!
…って、これじゃあまるで犯人を尋問する警察官ね。カツ丼でも持っていった方が良いかしら?






 かくして翌日、クリスマスイブの夜。
学院の諸々の行事を済ませた私は、さっさと部屋に戻ってきた。こんなに余韻みたいなものを
味わわないクリスマスはきっと生まれて初めてに違いなかった。
でも、今日はそうも言ってられない。部屋に戻った私は、演劇部が以前使っていたのを借りた
衣装―サンタクロースの服を着た。
これは…言うなればちょっとした演出だ。

昔、サンタクロースが本当にいるかどうかを巡って、瑞穂ちゃんと大論争を展開したことがあった。
その頃から賢かった私はサンタクロースの存在を否定していたのだが、瑞穂ちゃんは何と言うか、
瑞穂ちゃんらしく、私がどんなに理屈(と呼べるようなものかはさておき)を並べ立てても
絶対に首を縦に振らなかった。

今回のことで分かったように、今でもその変な頑固ぶりは健在だ。
だからそれを解きほぐす意味もあって、私はこの服を着た。それに、やっぱり今日はクリスマスだし、ね。

…本当に馬鹿なんだから、あの子は。
私にこんなことさせるくらいだから、ちゃんとみんなを安心させなさいよね!






「入るわよ、瑞穂ちゃんっ!」

でも、いざ瑞穂ちゃんの部屋に入るくだりになって、急に気恥ずかしくなった。で、それを隠すためにこんな
入り方になってしまったけど…失敗した。こんな押し入りみたいなことをするサンタがどこにいると言うのか。

「ま、まりや!?部屋に入る時はノックぐらいしてよ…って、どうしたの、その格好?」
「良いでしょ、今日はクリスマスなんだし。それよりね、今日は瑞穂ちゃんに聞きたいことがあってきたの。」

当然ながら唖然とする瑞穂ちゃん。でも私は(また気恥ずかしくなりそうなので)それをあっさりスルーすると、
単刀直入にこう言ってやった。

「聞きたいこと?」
「そ。…瑞穂ちゃん、最近何か悩んでるでしょ?」

やっぱりと言うべきか、怪訝な顔をする瑞穂ちゃん。だから私はまたさっさと聞きたいことを聞いてやる。
すると、瑞穂ちゃんは(いきなり私が訪ねてきたせいもあったんだろう)少し虚を突かれたという顔をした。
…私の気のせいじゃなかった。何かずっと悩んでたんだ。

「どうして、そう思うのさ?」
「そりゃ長い付き合いだもの、見てれば分かるわよ。」

それでもまだ白を切るつもりだったらしい瑞穂ちゃんに、私は更にたたみかけた。人には自分を乱暴に
扱わないように言うくせに、周りの心配ばっかりで自分をないがしろにしている節がある瑞穂ちゃん。
だから、今日くらいはその内に溜まってるものをしっかり吐かせてやらないと。
…方法論としては間違ってるかもしれないけどね。

「…みんなに心配かけたくなかったんだよ」

しばらく黙った後、ようやく口を割った瑞穂ちゃんから出た言葉は、全くもって私の予想した通りのものだった。
私は溜め息を一つつくと、今度は私の中のものを吐き出した。

「あのねぇ、それが逆に私を心配させてるって気がつかない?そういう気配りも大事だけど、一人で抱えこんでないで
相談して欲しい時だってあるの!」

とりあえずこれですっきり…私はね。相変わらず言いたいこと言ってばっかりで、そのうち自己中って後ろ指刺されそうな
気もするけど。
でもこれで、瑞穂ちゃんがどうして悩んでるか分かる。ここ最近私も悩ませていた原因が分かり、相談に乗って
あげられると思った。

ところが。瑞穂ちゃんはその前にこんなことを聞いてきた。

「ありがとう、まりや。でもどうして、まりやはそんなに僕の心配をしてくれるの?
僕のことによく気付いてくれるの?」

そう言われた瞬間、私はデジャヴを感じた。
ついこの前、貴子の所へ行った時の貴子の言葉と、表情。

――どうして貴方は、お姉様のためにそこまで一生懸命になれますの?

あの時、私は「幼馴染みだから」とか「放っておけないから」とか、適当に答えてはぐらかした。
でも、今はっきりと分かった。そんなのは詭弁だ。本当はそんな理由じゃない。私が瑞穂ちゃんの些細な変化も
感じて気になる理由。瑞穂ちゃんのために色々と走り回れる理由。
それは…。

「ま、まりやっ!?」
「…き、だから」

私は瑞穂ちゃんの声が聞こえないくらい恥ずかしくなって、瑞穂ちゃんの胸に顔をうずめた。
いつもははっきりと物を言う(と自覚している)私でも、こればっかりは言うにあたってらしくなく小声に
なってしまった。
…こんなんじゃダメだ。もっとはっきり言わなきゃ。

「好きだから。瑞穂ちゃんが好きだから!一生懸命になれるの。悪い!?」

これが私の正直な気持ち。私は瑞穂ちゃんのことが好き。
気付いたのは最近だけど、ずっと前から好きだった。―そう、もしかしたら、私が崖から落ちて、瑞穂ちゃんが
助けてくれたあの日から。

文化祭でのロミオの格好良さにドキドキして。
でも貴子のジュリエットとの相性の良さに焼餅妬いて。
その後も、瑞穂ちゃんと目が合うだけで、手が触れ合うだけで、言葉を交わすだけで。
私はいつもドキドキしていた。
その根底には、私が瑞穂ちゃんを好きという気持ちがあったんだ。

それにしても、好きと言った相手にこんな喧嘩腰で向かうなんて、普通の人のやることじゃないわよね。
もっとも、その時の私の精神状態は、残念ながらそんな判断も出来ないくらいヤバいものだったんだけど。

でも、私よりテンパっていたのは瑞穂ちゃんだった。私が顔を上げると、そこには取れたてトマトも
顔負けの真っ赤な顔をした瑞穂ちゃんがいたんだから。

「ま、まりや…。」
「何も言わないで。…そうだ、クリスマスで、しかも私はこんな格好をしてるんだから、これが無いと
締まらないわよね」

私はあえて(自分で言うだけ言っておきながら)話題を逸らし、サンタの衣装に含まれていた袋の中から
カツ丼…もとい、プレゼントのマフラーを取り出し、瑞穂ちゃんの首に巻いてあげた。

「メリークリスマス、瑞穂ちゃん。元気出してね」

最後までやっぱり言うだけ言って、私は部屋を出た。
ずっとそこにいて、瑞穂ちゃんから何か言われるのが怖かったから。

今思えば失敗だと思った。何せ私は結局瑞穂ちゃんが悩んでいた原因がよく分からなかったからだ。
最後まで頭の中が自分のことだけで一杯一杯なんて、間抜けもいいところだ。
あ〜もう、明日瑞穂ちゃんに会ったらどうすれば良いのよっ!






でも、私のそんなあらゆる心配は、どうやら杞憂に終わったようだった。

「おはよう、まりや」
「…おはよう、瑞穂ちゃん」

朝、寮から登校する時に、私がプレゼントしたマフラーを巻いた瑞穂ちゃんは普通に声をかけてくれた。
だから私も、普段通りに挨拶を返すことが出来た。

そして、それだけではなく。

瑞穂ちゃんはやっと、自分が悩んでいたわけを話してくれた。
どうやら、文化祭以来情緒不安定だった私のことが心配で、でも私にそれを気付かれまいとして
悩み考えながらも普段はいつも通りに振る舞っていたらしい。
…つまり、お互いがお互いを心配して半ば堂堂巡りになっていたということだ。
ここまで来ると、もはや笑うくらいしか選択肢が残されていないように感じた。

それだけ言い終えると、瑞穂ちゃんはここ最近めっきりご無沙汰だった、本当にすっきりとした(女殺しの)
笑顔を見せてくれた。

「昨日、僕はサンタさんにプレゼントを貰ったんだよ。まりや、やっぱりサンタさんは本当にいるんだよ。
僕だけのサンタさんが…ね。」

瑞穂ちゃんは完全にいつもの瑞穂ちゃんに戻って、私の手をそっと握りながらこう言ってくれた。
色んな嬉しいことが同時に起こって、もう嬉し過ぎて瑞穂ちゃんに抱きついてキスの一つでもしてあげたかったけど
公衆の面前、しかも女の子同士ということになっているこの状況で流石にそれは出来ない。でもそれが理屈で
分かったところで我慢できる御門まりやではなかったので、私は

「じゃ、瑞穂ちゃんだけのサンタさんから、もう一つプレゼント。」

という建前をつけて、そっと瑞穂ちゃんの頬にキスしてやった。
すると瑞穂ちゃんの顔はまたトマトになって、

「ま、まりやーっ!!」

と私の名前を叫びながら両手でぽかぽかと叩いてきた。

もし本当にサンタがいたとしたら。
そんな私達を、空の上でプレゼントの配達を終えて一段落しながら笑って見ていたに違いない。



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